「なあ謙也さん、知ってます?男でも潮吹きできるんやて」
ああ、なんというデジャヴ…俺はこの先の展開を知っている。
間違ってもそんなわけないなどと言ってはいけない。
その結果どうなるか、俺は身をもって体験しているのだから。
―好奇心はなんとやら―
無表情なまま、奴は俺の回答をただ静かに待っている。
大人しく餌を待つ猫のようで可愛い、せやけど言ってることはだいぶおかしい。
こんな事は初めてではない。
前にも一度、俄かには信じがたい話を持ち掛けられ、
うっかり話に乗った結果それこそまさに猫のように俺の胸の大事なところに爪を立てたのだ 。
ここで話に乗ったら最後、この体で実験されるに決まっとる。
ここはさりげなく、さりげなく流してかわすんや、俺。
「へー…、あ、そういや今日おかんが光来るからっておやつをやな」
…離脱失敗
ぐわっしっと、浪速のスピードスターもびっくりな早技で腕を捕まれた。
ギギギ、と音がなりそうな機械的な動きで恐る恐る、俺はゆっくり振り返る。(普段なら有りえん)
滅多に見られないめちゃくちゃ楽しそうな笑顔がそこにあった。
ああ…これはあかん…。
「試してみます?謙也さん」
遠慮します。と言う間も無く、俺はベッドに押し倒された。
そのまま唇を押し付けられて口の中を舐め回される。
「ふ、んんっ、ふぁ…っ」
「ちゅっ、ん…ね、謙也さん…?絶対気持ちよくしたるから…」
「はぁ、ん、あっ、ふっ…んんっ…」
濃厚+しつこく長いキスに脳に響く水音、耳元で囁く低めの声。
こんなんされたら、俺が承諾しないわけないってこと光は知っとる筈やのに。
ほんまずるい。力が抜ける、息があがる、動悸がヤバい。
俺かてもう気分はそっち方向にまっしぐらや、今すぐそのまま行為にもつれ込みたいところやけど。
この流れはヤバい、流されたらあかん…あかん、ってわかっとるけど……。
ほんまにしつこく口ん中舐めまわされてもう頭ぼーっとしてきとる。
ああもう、光になら何されてもええかもって気になってきた。
「ええです?」
「はあ、はぁ…っ、ん…」
もう一度確認されて、俺はもう拒むことなんかできんかった。
激しく乱れた息をしながら漸くそう頷き返すと、俺はそっと光の背中に腕を回す。
しっかり流されとるな、俺。
「ほなまずは…」
「んっ、はあっ、あっ、あ…っ」
いつものように、最初は前を上下にしごかれて絶頂へと上り詰める。
ていうかいつものより…
「ふあっ、あっ、ひか、るぅっ!そ、な、はや、あっ!んんーっ!」
ただでさえさっきのキスで興奮しとった身体はあっという間に絶頂を迎える。
光の服の裾をぎゅっと握って、達した。
放った精液が腹を汚して、脱力感に襲われる。
そらもう一瞬のような出来事やった。
「はっ、はぁ、ぁ…っ」
「ほんま早いっすね、謙也さん」
「うっさい!おまえがっ、あっ!?」
光は俺の腹に散った粘液を掌で掬って、にやりと笑った。
乳首までかすめたんは絶対わざとや。こんななったんお前のせいやで!
お前がここ最近で散々俺の乳首弄り倒したからこんななったんやで!
「ま、メインはこれからですんで、はようて助かりますわ。」
せやった…今日の目的はまたしても光の性的好奇心を満たすため。
確か、潮吹き?いやいや、どういうことやねん。
俺が困惑しとる間に光は一度達して萎えた先端に掌を当てた。
「ほないきますよ」
そう言い放ち、光は先端に当てた掌を円を描くように回し始めた。
「な、なんや?」
ぬるぬるした精液を纏った掌が先端だけを執拗に擦る。
何しとん………なんか、変な感じ。
「あっ、ん、ふあっ」
腰がむずむずする。何でそこばっか擦んねん、もっとちゃんと触って欲しい。
けど、光はそのまま先端だけを擦り続ける。
次第に速さも増してきて、俺の息もあがってくる。もどかしい、奇妙な感覚。
「はっ、はあっ、も、やっ、やめっ、あ、あぁっ」
握るでもなく、ただ当てた掌を先端で動かし続ける。
なんか、なんか…変な感じ…。
「あっ、や、やだ、や、あっ、ひうっ!」
しつこく、ひたすらそこだけを擦られる。
先端だけをごしごしと擦られて、身体がガクガク震えはじめる。
次第に頭が真っ白になる、唾液が零れとるけど気にしとる余裕がない。
あかん、これ、いつもとちゃう。
「あっ、ひ、あっ、やっ、おかし、なんか、くるぅっ!」
何かが出そうな感覚、けど、それが何かはわからん。精液でもない、小便でもない何かが
「あっ、でるっ、でちゃうっ、ひあぁぁーーっ!」
目の前が真っ白になって射精とは違う絶頂を迎えて、身体はびくびく震えて力が入らん。
吐き出されたそれは、ぴゅって顔にまで飛び散った。
「ひ、あっ、あ、う…っ」
びくんびくんて身体が跳ねて、力が抜けて動けん。こんな感覚初めてや。
「ほんまに出来ましたね、潮吹き」
「…ふ、ぁ…?」
まださっきの余韻が残っとる俺はいまいち状況が理解できとらんのやけど、今の潮吹きやったんか。
「はっ、はぁっ、こ、れ…あか…おかし、なる…」
強烈過ぎる感覚でまだ頭も腰もふわふわしとる。
「ええですね、これ。謙也さんめっちゃエロかったっすわ」
「……っ」
光の言葉にじわじわと自分の乱れっぷりを自覚し出した。
唾液やら出した謎の液やらで多分いま俺の顔びちょびちょやし、でっかい声で喘いでもうたし。
「どうでした?気持ち良かっ」
「それよりっ」
恥ずかしさから遮るように声をあげて、咄嗟に話題をそらそうとした、したが……
「はよ、続き……っ」
「……積極的っすね、続き、したいっすか?」
あーあーまた意地悪な顔して笑ろてる……。
もうヤケや、羞恥心とかどうでもええわ。
「も、ええやろ?」
光のズボンに手を伸ばして、布越しでもわかる固くなったそれに触れて見上げた。
「俺、こっちでイきたい……」
「良おなかったですか?」
「いや…良かったけどやな……」
「謙也さんめっちゃ気持ち良さそうやったやないすか?」
「うっ…その…」
「イッとるときの謙也さん可愛かったっすわ、またやってもええでしょ?」
また、あれをするんか……あんな強烈な快感をまた…?
毎回毎回あんなんやられたら堪ったもんやない、が、でも…でも………
「あー…そ、の…まぁ、たまになら……」
その時、俺は見てしまった。
光が俺の言葉を聞いてニヤリと笑うのを。
ああ、またはめられてもうた。
けどあの全身を走り抜ける強烈な快感は、ちょっと癖になりそうや。
「ほな謙也さん、続きしましょうか」
「ん……」
そんなことを考えながら、俺は今日も光に身を委ねるのだった。
〜fin〜
2014/03/25