付き合い出して初めて、家に恋人を招く日。
クールでドライな光やけどこんな状況やし、ちょっとくらい甘い展開期待してもええやろか。
鳴り響いたインターフォンに肩を揺らして飛び上がり、一目散に玄関に走る。
半分以上の、いつも通りクールにあしらわれる覚悟とほんの少しの淡い期待を胸に、俺は家の扉を開けた。

「い、いらっしゃい……っ」

「ども」

いつも通り、あまり変化の見られない表情で佇んどった財前はとてもいちゃつきに来ましたって感じはしない。
元々名目は俺が行き詰まったゲームの攻略法を教えてくれって縋り付いたわけで、イチャイチャしたいなんて考えとるんは俺だけかもと覚悟はしとったけど、早々に淡い期待が霧散していくんを感じながら俺はぎこちなく笑った。

「あの、今日家……夜まで誰も帰ってこんから……気ぃつかわんでええで」

「そうっすか」

恋人になる前は、こういう日に何度か家に招いたことがあるけど、こういう関係になったからにはちょっとくらい意識してくれたり照れてくれたりしてもええんやないかな…。
これ結構おいしい状況やと思うんやけど、返ってきた言葉はたった5文字。
まあ……わかっとった。想定の範囲内や。
ちょっとだけ、自分ばかりが相手を好きな気がして切なくなるけど、こんな長い時間光と家に二人きりなんてなかなかない。
今はただそんな時間をいつもの距離感で楽しむのもええかもしれない。
まだお付き合い始めたばかりやし、これからちょっとずつ進んでいってもええ。
ゆっくりは俺の一番苦手なことやけど、光とならその苦手もきっと楽しいんやろな。
でもまあ、機嫌を見て手くらい握ったろうかななんて、この時の俺はまだ光の本音に気付かずに甘酸っぱい時間を妄想しとった。






***




部屋に入ってドアを閉めて、適当に荷物を置く。
お茶と菓子を取りに行くためにまた部屋を出ようとしてその前に光に声をかけた。

「あ、好きなとこ座ってええで」

そう言って顔だけ向けて光を見ると、光は俯いたまま小さく何か呟く。

「あかん……」

「ん?」

蚊の鳴くような、光にしては弱々しい声。
表情は見えへんけどただ事やない。

「もう我慢できひん……」

「光……?」

よく見ると、光は拳を握り締めて小さく震えとる。
なんか怒らせるようなことしてもうたんか!?
慌てて光に向き直って顔を覗き込む。

「ひ、光?どないした」

「ほんまもう無理っ、限界……っ!好き!謙也さん好きです!大好き!」

あまり聞き慣れない言葉とともに景色が反転して、背中に柔らかい衝撃。

「おおおおおお!?」

気が付くと目の前には切羽詰まったような、切なげな光の顔があって、その背景は、天井?
あれ、俺押し倒されてる?
背中の柔らかい感触は自分のベッド。
その上に押し倒された俺、その上に馬乗りになる光。
怒った光にしばかれる、っちゅう雰囲気でもない。
耳まで真っ赤になった光が繰り返しとるのはいつものクールな罵倒やなくて、なんやめっちゃ甘い言葉の数々や。

「謙也さんっ!好きっ!めっちゃ好きです!」

「ひ、ひかる?」

「変っすよね。らしくないっすよね。わかってます……自分でもわかっとるけど、もう抑えきかへんねんっ!好きや!ほんま好き!」

「とっ、とりあえず落ち着こ?な?」

俺は光を自分の胸に抱き寄せてあやすように抱き締めた。
うざいとか暑苦しいとか言われるかも、と思ったけどそんな気配はない。
むしろ甘えるみたいに頬を擦り寄せて嬉しそうに目を細めて微笑んで……この子いったいどないしたん?
いつもの毒舌どこいったん?

「謙也さん……好き……」

「ん、俺も好き」

「嬉しい……めっちゃ嬉しい……っ」

暫く抱き合ってたら光が少し身動ぎするような気配がしたから腕の力を緩めた。
光はゆっくり起き上がって少し不安げな瞳で俺を見る。

「いきなりすんません……」

「ええよ。落ち着いた?」

「はい、ちょっと……」

あ、まだちょっとなんや。
それでもさっきの取り乱した様子からすれば落ち着いて見える。

「……あの、俺」

「ん」

暫く躊躇うように視線を泳がせていた光が、意を決したように言葉を紡ぎ始めた。
俺は出来るだけ優しく笑って一つ一つ取りこぼさない様にとその言葉に耳を傾ける。

「謙也さんのことめっちゃ好きで」

「お、おん……」

「ほんまはずっとこうしたかったんです」

「そ、そうなんや」

顔が一気に熱くなる。ヤバい、めっちゃ嬉しい。
光は今までこんな風に気持ちを大胆に表現することはしなかった。
俺から告白した時だって、好きやと言った俺に「俺も同じです」って言って、
付き合って欲しいと言ったら小さく「ええですよ」と返してくれたけど、直接好きやと言ってくれたことはなかった。
やから俺は、光の中にこんなに俺に対する好意があったことを、今まで知らんかった。
いつか俺と同じくらい俺んこと好きになってくれたらって、そう思っとったくらいや。
それが実は、内に秘めてた感情が溢れだしてまう程俺を好きでいてくれたやなんて。
今度は俺が光に飛び付いて抱き締めたくなってもうた。
けど、光がその気持ちを話そうとしとるんや、ちゃんと聞かなあかん。
そう必死に自分に言い聞かせ叱咤しながら光の話に集中する。

「謙也さんとこんな関係になれるなんて、思ってへんかったから……しかも夜まで二人きりとか言われたらもう我慢できんくて」

そう言って、光は俺の服の裾をぎゅっと掴んだ。

「大好きです……謙也さん……」

そしてそのまま顔を近付けて……

「んっ、ふぅ、ん」

「ちゅっ、はぁ、んんっ」

光との初めてのキス、それもめっちゃ濃厚なディープキスに頭がくらくらする。
光からなんか甘い匂いがして、心臓がめっちゃドキドキして、わけわからんくなってきた。
夢中になって光の唇の感触を味わって、その口内を舐めまわす。
衝動が抑えられんで頭ん中であかん、怒られるかもって思ったけど。
光は怒るどころか応えるように舌を絡めて必死に俺の服の裾を掴んどった。

「んん、ちゅうっ、はぁ、んぅ」

「んっ、はぁ、ちゅっ、謙也、さん……」

長いキスの後離れた光の唇は唾液で濡れとって、目は潤んで息が荒くて顔が赤くて要するに色っぽい。
あまりに色っぽい姿に思わず唾を飲み込む。
耐えられんくなりそうで、とりあえず身体を起こそうと身を捩ると、光の身体がびくって跳ねた。

「あんっ、や、動いちゃっ、あかん」

「えっ」

光の反応に固まる俺。
そして俺の腹に当たるなんか硬い感触。

「はぁっ、ん、すみませ、俺……」

「えっ、と、光……?」

「っ、」

光の足の間でズボンを押し上げとるのはどう考えても光の股間のもんやろう。てことは。

「光、もしかして欲情しとる?」

「っ!それはっ、その……ごめ……なさ……っ」

急に声を震わせて目を伏せて、悲しげにそう呟いた。
まるで叱られた子供みたいや。
そんな顔をさせたいわけやない。
俺は出来る限り優しい声で、光に問い掛ける。

「何で謝るん。俺とのキスで興奮してくれたんちゃうん?」

「ちゃうく、ないです……」

「やったら謝ることないやん」

「けど…謙也さん、嫌やないっすか?」

「嫌なわけないやん、めっちゃ嬉しい」

俺が光をそういう意味で好いとるんと同じように、光も俺をそういう意味で好いてくれとること。
俺とのキスで興奮してこんななってしまうくらい、俺を好いてくれとることが、嬉しないわけがない。

「あっ…」

上体を起こして唐突に光を抱き寄せると、光は小さく声をあげた。
抵抗することなく俺の胸に抱かれてくれる。
トクトクと、光の心臓の鼓動が胸から伝わってくる。ほんまに緊張してたんやな。

「ほんまに嬉しい。光も俺とおんなしやったんやな」

「おんなし?」

「おんなし。俺もめっちゃ興奮しとんねん」

ほら、聞いて?そう言ってしゃべるのを止めると、光は俺の胸に耳を当てて目を閉じた。

「めっちゃドキドキしとる」

「せやろ?光と二人きりでめっちゃドキドキしとる」

「やったら、謙也さん」

「ん?」

「俺んこと、抱いてくれますか?」

いきなりの大胆な発言に驚いて顔を見たら、光はうるうるキラキラした瞳で俺のこと見とった。
からかわれてるとかやないやんな。
めっちゃ色っぽい顔しとるし。
思わず喉を鳴らしたら、光はそれを見てクスッて笑った。

「謙也さん、俺のこと食べて?」

首に腕を絡めて甘えるみたいに首を傾げてそう言われたら、もうなんもせずにはいられなかった。
ベッドに光を押し倒す。
怖がらせないようになるべく優しく。

「光……ほんまにええの?」

「ええに決まってますわ。ずっと、こうして欲しかった…謙也さんの好きにして?」

一切の抵抗もせずに、光は俺に身を委ねた。
制服のボタンを外してカッターシャツを左右に捲り、インナーをたくし上げると、薄い胸板が露になる。
そこにある二つの可愛えピンクの突起が、期待するようにぷっくりと立ちあがっとるんを見てそっと手を伸ばす。

「やぅ、あ……っ」

「あ、ご、ごめ」

「あ、謝らんといてください……今の、もっとして欲しいです」

「え、ええの?」

「はい……なんや、ぴりってして、ようわからんけど声出てもうた…けど、嫌やないです…せやから…もっと…」

「お、おん……」

再び手を伸ばして突起を摘まむと、光は小さく声を漏らした。

「あっ、ん……っ、ひ、ん……っ」

「光、ここええの?」

「ん、そこ、気持ちええです…あんっ」

指で突起を転がすと可愛らしく跳ねる光の身体。
俺の手で光が気持ちよぉなってくれるなん、めっちゃ嬉しい。
調子に乗って更に弄れば、光は切なげに俺を見詰めた。

「謙也さん……っそこ、ばっかや、なくて……っ」

光は足を広げてズボンを押し上げる股間を撫でる。

「こっちも、触って……っ」

なんて色っぽい顔するんや。
こんな光を見るんはほんまに初めてやし、興奮が抑えられへん。

性急に光のズボンと下着を脱がせたったら、中からしっかり勃ち上がって濡れたそれが現れた。
既に先端からはカウパーが溢れとって、ぬらぬらと光っとる。
初めて触れる光の性器、つか、人のもん触れるなんてこと自体が初めてや。
指を這わせると明らかに普段の体温と違う熱を持ったそこがヒクリと震える。

「んっ…ふぅ……」

緊張しとるのか、恥ずかしいのか、光は目を逸らして、でも拒絶する様子はなく俺の手が敏感なそこに触れることを許してくれる。
探るように上下に扱くと光はびくびくと身体を震わせて背を反らす。

「んっ、ふぁ…っ、んっ」

声を抑えるように自分の口元に手を当てとる。
洩れてまうらしい声を必死に我慢しようとしてる姿はそれはそれでそそるけど、俺の手で感じてくれてるならそれをありのまま聞かせて欲しい。

「光、声、我慢せんで…」

「で、も……男が、こんなん、キモないっすか…」

「なんでや、可愛えで。感じたままの声聞かして?」


光は何度か視線を彷徨わせてからちらりと俺を見て小さく頷くと、おずおずと口にあてた手を外してもう一度窺うように俺を見つめた。
それを確認して、俺は再び手を動かした。

「あぅっ、あっ、あぁっ、けん、やさっ、ふぁっ」

「気持ちええ?光」

「あ、んっ、ええ、ですっ、あっ」

カウパーがどんどん溢れてきて卑猥な水音が増してくると、それがますます興奮を煽る。
まだ脱いでいないズボンの中で、俺の股間の息子も熱を持って張り詰めてくるけど今は光の方が優先や。

「あっ、イッて、まうっ!謙也さ、あぁっ!」

「ええで、イき」

俺にそれを許されるんを待っとったのか、光はそれを聞くと安心したように目を細めて頷き、俺の愛撫に身体をびくつかせる。

「あ、出るっ、謙也、さ、あぁぁっ!」

掌に放たれた白濁。光が俺の手で気持ちよくなってくれた証や。
嬉しくて思わずそれを見つめて息を吐く。
うっとりとした顔で胸を上下させる光の涙が滲む目尻を舐めると、擽ったそうに目を眇めて頬を緩める。

「気持ち良かった?」

「ん…な、謙也さんも…」

光が俺の股間に視線を落とす。
まだズボンに収めたままの俺のちんこはしっかり立ち上がってズボンの中からその形を主張しとる。

「勃ってますね?」

「そらそうやろ…光めっちゃ可愛かってんもん興奮するに決まっとるわ」

「良かった…あんなん見て萎えてもたらどうしよかと思いましたわ……」

「そんなわけないやん」

光の額にキスをして頭をくしゃくしゃと撫でる。
咽を撫でられた猫みたいに目を細めて、光はふふっと可愛らしく声を漏らして笑った。

「ほな、謙也さんも気持ちよぉなってください、ね?」

「うん?」

「俺ん中に、謙也さんのちんこ挿れて欲しいんすわ…あかん?」

「なぁっ!?」

大胆な申し出に狼狽する俺に、光は自分の言葉に不安を持ったのか少し表情を曇らせる。
あかん、光にそんな顔をさせるなんて。
やっぱ男じゃあきませんか?そう顔に書いてある。
それを言葉にさせる前に、俺は光をぎゅっと抱きしめた。

「ほんまに、ええの…?痛いかもしれんで…?優しく出来んかも…気持ちよくないかもしれんで…?それでも、ええの…?」

光と繋がることを拒否したいわけやないことがわかったからか、安心したように息を吐くと光は俺の背中に腕を回して抱きついてくる。

「そんなん、謙也さんと繋がれるだけで俺は幸せなんすわ」

そんなことを言われたら、俺はもう止まれんかった。
いつか、の時のために買っておいた新品のローションを引っ張り出してきて蓋を開けると、光は驚いたようにそれを見つめた。
用意してたん?と聞かれて視線を泳がせながら頷いたったら、光はくすりと笑った。
期待しとったんバレバレやろけど、それが、光を安心させられるならそれでもええ。



ローションを指に絡めて、光の足を開かせて窄まったそこに指を這わせる。
ぴくんと身体を震わせて、小さく声を漏らした光は眇めた瞳で俺を見て頬を染めた。

「謙也、さん……」

「挿れるで?」

こくんと頷いたのを確認して、そっと人差し指を一本光の中に挿入する。

「くぅ…ん…っ」

「い、痛い?」

「平気…です…っ、んぅ…」

平気言うてもやっぱり違和感はあるに決まっとる、眉根を寄せて俺の服の裾を掴んだ手をぎゅっと握る。
何度も事前に調べておいた男の身体の気持ちのいい場所を記憶を引き出しながら探っていく。
第二関節まで中に埋めたところで、くいっと指を曲げる。
そこには柔らかい内壁の中で僅かに膨らんだしこりがあった。

「ひあっ!あっ、あっ、んぅっ!」

びくんと光の身体が跳ねて、甘い声が上がる。
見付けた、ここが前立腺や。

「けん、やさっ、そこ、気持ちぃっ」

「ここええん?」

言いながら指を動かして刺激すると、光は俺の指をきゅんきゅん締め付けながら媚声を上げる。

「はあっ、んぅっ!あっ!謙也さ、謙也さんっ」

「光、めっちゃ可愛え」

ローションの卑猥な水音が俺の興奮を煽る。
中で動かしたり指を増やしたりしとると、少しずつ、でも確実に柔らかくなっていく。
だいぶ解れたかと感じた辺りで、光がきゅうっと俺の服を掴んで涙で潤む瞳を向けてくる。

「謙也さん……っ、も、ええですから……っ」

とてつもない色気を孕んだ表情に、俺も興奮が抑えられへん。
性急に自分のもんを取り出すと、そこはもう扱く必要もない程立ち上がっていた。
それを見て、光はほぅと熱い息を吐く。
不安と期待が混じったような顔で見上げられて、濡れそぼった唇から小さな声で名前を呼ばれたらそれだけで眩暈がする。
光が愛しすぎて吹っ飛んでしまいそうな理性をギリギリ押さえ付けるのはやっぱり光を愛しく思う気持ちやった。

「怖い?」

「怖ない、言うたら嘘になります……けど」

「けど?」

「それ以上に……謙也さんと繋がりたいってずっと……思ってたんすわ」

そんなことを思ってくれとったなんて今日までちっとも思わんかった。
男の身体で男受け入れるなんて、それを俺に告げるまでに至る覚悟は生半可なもんやないはず。
そうまでして、俺のことを。
あまりにも愛しくて、光の身体をぎゅっと抱き締める。

「謙也さ」

「好きやっ、光、ほんまに好きっ」

「……っ」

光がこんなに俺を好いてくれとったことが嬉しい。
光が俺を選んでくれたことが嬉しい。

「俺も……めっちゃ好き……」

そう言った光の言葉ごと唇を塞いでそっとベッドに押し倒す。
そのまま自身のちんこを光の後孔に押し当てると、そこは俺のを奥に招き入れようとするようにひくつく。

「いくで、光っ」

「んっ、ああっ、謙、也さんっ」

「っ、光……っ」

「謙也さ、ん……はっ、うっ……」

「光……、痛い……?光……っ」

涙をこぼすほど苦しそうな光……そらそうや。
こんなとこに挿れられて苦しないはずない。
けど、光は痛みを逃がすように浅く呼吸をしながら、一生懸命俺を受け入れてくれる。
ゆっくり、ゆっくり光の中に押し入れていく。

「はっ、アッ!なかに、俺んなか、に、謙也さんのが、入ってっ、あ……ンっ!」

「っ、はぁっ、光ん中、熱い……っ」

「謙也さん、のも、熱いっ、あんっ、もっ、溶けてまいそぉ……っ」

全部収めて、茂みが光の尻に当たると、俺は一度動きを止めたけど、光めっちゃ可愛いしエロくて我慢の限界や。

「ここに、居るん、わかる……謙也さん……」

うっとりした顔でそう言いながら、光が自分の腹を撫でる。

「光……っ」

「あぅっ、はぁっ、あっ、謙也さんっ、けんや、さ、あっ、ひぁっ」

辛抱できんくなって、思わず腰を動かした。

「ひゃうっ!あっ!けんやさ、あっ!ひゃうぅっ!」

「はっ、すまん、ひかるっ!」

「あっ!ええ、ですっ、謙也さんっ、の、好きに、して」

「っ、そんなん言われたら、止まらんくなるわ」

「止めんでっ、俺は、謙也さんの、やもんっ、んんっ!はぁっ、あんっ!」

なんや顔めっちゃうっとりしてあかん可愛すぎる。
初めてはもっと大事にするって決めとったはずなのに、いざ繋がってみたらあまりの淫靡な光の姿に興奮が抑えられんくて
衝動のままに腰を打ちつけることしか出来ん。

「あっ、はぁんっ、謙、也さん、俺ん中、気持ちええ……っ?」

「んっ、ええよ。めっちゃ気持ちええ」

「あっ、はぅっ、ん、嬉し、あっ、めっちゃ嬉しい……っ」

そう言って、光は自分でも一生懸命腰を動かす。

「はぁっ、あ、んっ、もっと、気持ちよぉなってっ、俺ん中で、感じて……っ」

あかん、ほんま可愛すぎる。

「もぉ、めっちゃかわええ!」

「あっ!謙、也さ、すご、激し、ひぁぁっ!」

「光も、気持ちよぉなってっ、俺と一緒に」

「きもひぃ、れす、あっ、あぁんっ、あっ、あんっ!なか、だしてぇっ!」

きゅんきゅん光が俺のを締め付けてきて、それがめっちゃ気持ちええ。

「あっ!ひぁっ!も、らめ、イッちゃうっ!あぁぁっ!」

「あか、俺もっ」

「んっ、けんやさ、一緒に、っああっ!イくっ!イッちゃ、あァァァっ!」

びくびく光の身体が痙攣して、白濁を吐き出した。
と同時に俺も光の中に精を放つ。

「あっ、でとる……っ、俺の中に、謙也さんの精液でとる……っ」

「はっ、うっ、すまん、光っ、中に」

「んっ、あっ、ええです、いっぱいだして……っ、俺ん中、謙也さんでいっぱいにして……っ」

「っ、あんま、煽らんといて……っ」

止まらんくなりそうで、とりあえず光の中から出ようとしたけど、光はそれを阻むように抱き付いた。

「あかんっ!」

「なっ、ひかっ、ぅっ」

力を入れたせいか光は俺のをきゅうって締め付ける。

「やや、まだ……居って……っ」

「光……っ」

「謙也さんの熱、感じてたい」

言いながら、光は自分でゆるゆると腰を動かして、締め付けたままの俺を中で扱く。

「あ…あかん、光……っまたぁ……っ」

「あっ、ふぁっ、また、おっきなりましたね……謙也さん……?」

「くっ、ひかるっ」

うっとりとした顔で見上げる光があまりに可愛らしくて、またがつがつと腰を打ち付けた。

「あ、ひんっ!きもひ、けんやさっ、ひぁぁんっ!」

「光っ、好きやっ、ほんまに、ほんまに俺っ、お前が好きやっ」

「あっ、あっ、うあっ、お、れも、好きぃ!はぁっ、んんっ!け、やさっ、あんっ!」

何度も何度も腰を打ちつける。

光が白濁を吐き出したんもわかったけど、止められへん。

「あんっ!あ、いま、イッて、あうぅっ!」

「光っ、光っ!」

「あぁぁ…………っ!」

ビクンッて背を反らせて、何度かびくびくと痙攣した後、そのまま光はベッドに身体を沈めて動かんくなった。

「ひっ、光っ!」

瞼を伏せたまま、光は呼び掛けにも答えずぐったりしてる。
失神してもうたんや。

「光っ」

慌てて光の中から自身を抜くと、ひくひくと収縮する孔からどろりと自分の出した精液が流れてくる。
汗と涙で顔に貼り付いてまった髪を払い顔を覗くと、光は静かな寝息をたてとった。

「無理、させてしもた……っ」

罪悪感に苛まれながら俯き、光の頭をそっと撫でる。

「すまん……」

「ん……謙也、さん……」

不意に名前を呼ばれて顔をあげた。
目を覚ましたんかと思ったけど、瞼はまだ伏せられたままや。
頬を撫でて、もう一度名前を呼ぶ。

「光……?」

そうすると、今度はふにゃって音でもしそうな顔で笑った。
愛しくて、胸がきゅんって締め付けられたような気がした。
ずっとこのまま見てたいくらいやけど、このままにはしておけん。
中のもんをできる限り掻き出して、身体を温めたタオルで拭いたけど、中々目を覚まさんから心配になる。
ほんまに大丈夫なんやろか……。

「光……」

また名前を呟くと、睫毛が少し震えて瞼が薄く開いた。

「あっ」

「……謙也さん」

「光っ、身体大丈夫か?すまん……無理させてもうて……」

「俺が、してほしい言うたんすわ……気にせんでください」

声を上げすぎたんか、かすれた声でそう言う光が胸が苦しいくらいに愛しくて、額にそっと口付ける。

「お前がええ言うても、俺があかんねん……光んことめっちゃ大事にしたい」

「……おおきに、謙也さん。そんな風に言うてもらえて幸せっすわ」

ほんまに幸せそうにそう呟く光を見とると、愛しい気持ちと共に別の気持ちが沸き上がってくる。

「……こんな光他の奴に見せたないなぁ」

きっとまだ誰も知らない光の姿。
自分勝手な願いかもしれん、けど知っとるんは俺だけでありたい。
独り言のように口をついて出た言葉に、光が小さく答えた。

「俺も、すわ」

「ん?」

「俺のこんな姿、知っとるんは謙也さんだけでええです。謙也さんにしか見せたない」

「光……っ」

あんまり可愛えこと言うから、堪らんくなって光をぎゅーって抱き締めた。

「もーめっちゃ可愛えこと言うてー!大好きや!」

「ふふっ、嬉しいっすわ」

甘やかな空気に包まれて光を見詰めたら、光はそっと目を閉じた。
それの意味を汲み取れんほど鈍感やない。
俺も光の頬に手を当ててまぶたを閉じて、その唇に自分のそれを重ねた。


***

「謙也さんうざいっすわー」

翌日、朝練で会った光は今までのように辛辣な言葉と態度を俺に向けとった。
スタスタと背を向けて立ち去る光。
それを見送りながら俺は目を細める。
昨日までは、付き合う前と変わらないその言葉と態度にちょっとだけ泣きたくなった時もあったけど。
今はその言葉の裏に隠したあの子の気持ちをちゃんと知っとるから。

「財前はほんまクールやなぁ」

「まあな、そういうとこも可愛えけど」

「あれ?謙也前はもっと甘えてほしいとか言うてへんかった?」

「光はあれでええねん」

「ふーん、どんな心境の変化やら」

そう呟いて、白石は俺の横から立ち去り、部員に集合をかけた。
光の甘えた顔は、俺だけ知っとったらええんや。
他の誰も知らんでええねん。
そんな事を考えとったら、光がくるりと振り返って俺を見た。
俺しか見てないのを知ってか、めっちゃ優しい顔で微笑む。

「スピードスターの癖に何もたもたしとるん。はよ行きますよ」

可愛い恋人は口では辛辣な事を言いながら、きゅっと俺の服の裾を掴んでふにゃって、俺だけに見せる笑顔を向けた。




fin


2015/06/16