光と初めて抱き合ってから1ヶ月。俺らの関係は良好や。
人前では相変わらず生意気で愛想のない後輩というキャラに徹する光。
やけど二人きりになると、その生意気な態度は鳴りを潜めてただただ俺を求めてくる。
今日も今日とて俺たちは俺の部屋に二人きりになった途端にどちらからともなくキスをして身体も心も昂らせとった。
「んんっ、ふぅ、ちゅっ」
濃厚なキスの後、唾液で濡れた唇を赤い舌で舐める光の顔はすっかり欲情しとる。
俺の肩に腕を回して抱き付く光はあまりにも色っぽくて、俺を興奮させる。
こうなったらもうお互い熱を治める事はできず、互いの服の中に手を忍ばせて愛撫し始める。
「はぁっ、あっ、謙也さ、あんっ」
「光…んっ、はぁ…っ」
「んっ、謙也さんの…もうおっきなってますね…」
「光かて…」
興奮して芯を持ち始めた互いのものを布越しに扱き合いながら、高揚していく気持ちのままにベッドに傾れ込もうとした、が、押し倒されたんはまたしても俺の方やった。
初めて身体を重ねた日を思い出しながら俺は切羽詰まったような顔で見つめる光を見上げる。
「え?光?」
「謙也さん、下脱がしますね」
「えっ!?ちょ、なん?」
あれよあれよと言う間に下着ごとズボンをずり下ろされる。
まさか、今日はいつもと逆でいくとかそういうことなん?
と俺が混乱しとる間に光は俺の足の間に膝をついて座り、股間にそっと手を添える。
「今日は、先にこっちで気持ち良くしたりたくて」
ひとまず立場を逆転したいわけではないらしい事はわかった。
起き上がって光を見下ろすと艶かしい表情に少しの緊張を織り混ぜたような顔で見上げる光と目が合った。
「こっち、って…?」
俺の質問には答えずに、光は俺のちんこの先端にそっと唇を近付けてちゅっと小さな音をたててキスをする。
言葉での説明がなくても察した。
こっちっちゅうんはつまり、口のことや。
「えっ?えっ!?」
「やり方、調べてきたんで…」
跪き、上目使いで見詰めながら唾液で濡れた赤い舌をねっとりと竿に這わせる。
それが堪らなく気持ち良くて腰が震えた。
「んぁ、光…っ」
「ちゅっ、んんっ」
竿をたっぷりと舐めた後、光は緊張を解くように少し深めに息を吐くとぱくりと先端をその口に含む。
「んっ、んむ……っ」
「ちょっ、光」
「ふぅっ、ん…ちゅ」
「あかんて、そんな、したら…っ」
「気持ひいれふか?」
そら気持ちい。気持ちいけどやな。
「そんなん咥えたらあかんっ」
そう言うと、光は一度口を離して顔をあげた。
拗ねたような顔で俺を見上げる姿も堪らなく可愛らしい。
「あかんことないでしょ。それともフェラは嫌いですか?」
「嫌いとかやのうてっ、あかんて…、そんなんされたら、すぐイってまう……っ」
目をぱちぱちと瞬かせると、にっと口の端を釣り上げて悪戯っぽく笑う光。
拒絶ではないことを悟ったのか、光は俺のをまた咥えて舐め出した。
「ひかる、あかんっ」
「んっ、ふ……っんんっ、ちゅっ」
舌先を器用に動かして絶妙な快感を与えてくる。
生暖かい舌の感触と絶妙な刺激に腰が揺れてまう。
唇で挟む力にも緩急をつけられたら堪らなく気持ち良くてもう我慢できひん。
「くっ、あっ、光っ、出るから、離してっ」
「んっ、らして、ええれす」
咥えながら喋ったらあかんっ!て言いたいけどもうそんな余裕はない。
ぴちゃぴちゃいう音と光の舌の動きとちんこに掛かる熱い息とで俺の頭の中は真っ白や。
「あっ、んっ、出るっ!」
「んっ!ふぅ、んっ」
強烈な快感とともに、光の口のなかに吐精した。
イったことで燻った頭が冷静になって、またやってもうたと思った。
慌てて光を見ると、光が喉を鳴らして俺の出したもんを飲み込もうとするところやった。
「ひ、光っ、そんなん飲んだらあかんっ!ぺっしなさい!ぺっ!」
「んっ、もう飲みました」
俺が光の口の中の物を吐き出させようと差し出した掌はその意味をなさないまま。
光はこくりと喉を鳴らしたあと、ぺろっと舌を出してもうないことをアピールする。
その姿はめっちゃ可愛い。可愛いけど、なんともいたたまれない気持ちや。
「もーっ!そんなん不味いやろ!」
「不味いことないです。謙也さんのやし」
「なっ、そ、それにお前苦いのダメやろ……っ」
「大丈夫です。謙也さんのやから…謙也さんが俺の身体で気持ち良ぉなってくれるなら…苦くても痛くてもええんです」
「お前はもー……っ」
その言葉に、胸がチクリと痛む。
なんでなんやろ。お互いに求め合ってるはずなのに、俺たちの気持ちにはズレがある、そんな気がしてしかたない。
項垂れたまま光の肩に顔を埋めて思い切り抱き締めて頭を撫でる。
耳元で、ふふって嬉しそうな笑い声が聞こえた。
「苦いのに、よお頑張ってくれたな」
「気持ちよおなれました?」
「めっちゃ良かったわ」
「よかった……ほな謙也さん……ご褒美ください」
そう言って、光は身体を離すと自分で足を広げた。
既にズボンの中で膨らんだそれが形を主張しとる。
さっき触り合った時はなかった先走りの染みが、触れていない間に出来たもんやとわかる。
「俺の舐めて興奮したん?」
「そらもう……謙也さんの熱いの……はよほしいっすわ……」
とろんとした目で俺を見つめて首に腕を絡めてくる。
それだけでも一度達した筈の俺の息子はまた反応してもうた。
「ほな、続きしよか」
そう言ったら、光は嬉しそうに微笑んだ。
身体を繋げて、肌がぶつかり合う度に室内には淫靡な水音が響く。
「あうっ!あっ、謙也さん、の、熱いぃっ」
「はっ、光ん中も、熱いっ」
「ふあっ!気持ちええ……っ、おっきくて、あっ、凄いっ、気持ちええっ」
「っ、可愛え、光」
「んあっ!はぁんっ!謙也さ、あぁっ!気持ちぃっ!気持ちええよぉっ!」
光は自分で腰を振りながら気持ちいと何度も叫ぶ。
直接的な快感に加えて光のダイレクトに耳に吹き込まれる言葉にも興奮を煽られて、俺は夢中で突き上げた。
「あっ!あんっ!俺んなか、謙也さんのちんこで、いっぱいなって、あっ、そこ、気持ちええっ!」
「んっ、光っ、ここ気持ちええん……っ?」
「あっ、ひぃんっ!きもちぃ、す、あっ、ひっ、謙也さんのちんこ、きもちぃっ!」
「めっちゃとろとろや、光の顔」
「らって、あっ、きもひぃんやもんっ!けんやさんのが、俺んなか、ぐちゅぐちゅする、ん、きもちぃからぁっ!」
「っ、ほんま、あかんわ」
「くぅ、んっ、けんやさん!激し、ひ、んああっ!」
「光が、可愛えこと言うから」
「あっ、あんっ、はぁっ、すご、きもちいっ!はぁんっ!」
前立腺を狙って何度も突き上げ、肌がぶつかり合い音を立てる。
光のなかは温くて、内壁が俺のに絡み付くように締め付けてくるんがめちゃくちゃ気持ちええ。
同時に光のも扱いてやれば、大袈裟なくらいびくびくして爪先で何度もシーツを掻く。
先端を強めに捏ねると、光は気持ち良さそうに白い喉を仰け反らせて鳴いた。
「あぅっ!やぁんっ!そ、な、いっぺんに、ああっ!だめぇっ!」
「あかん?これよおない?」
「あっ!良すぎてっ、らめ、尻ん中もちんこも気持ちくてっ、ひゃうぅっ!やぁんっ!イっちゃうっ、も、イっちゃうぅっ!」
「はぁっ、ひかるっ、かわええっ、めっちゃ好き」
「んぁっ、ああっ!謙也さんっ、俺も、好きっ!あんっ!ひゃうっ!やぁんっ!あっ、イクぅっ!あぁっ!」
光の出した精液が飛び散って光の腹を汚す。
同時に光の内壁が俺のを締め付けて、搾り取られるように俺も光の中で出してもうた。
ゆるゆると、何度か中に精液を刷り込むように腰を動かした後ゆっくりと引き抜いてく。
惜しむように締め付けてくる光の中からちんこを抜くと、抜いた穴から溢れ出てくる俺の精液がとろとろと光の尻を伝ってシーツに染みを作った。
「あっ……あ……ふぅ……んっ」
長いことヒクンヒクンて身体を震わせながら、うっとりとした顔で放心したままの光はめっちゃエロい。
「はぁ、ん、謙也さん……」
「ん?」
「キス、して……ください……」
「ん」
舌を絡めて深いキスをする。
唇を離すと、光はぎゅっと抱き付いてきた。
「ふふっ」
「んー?」
耳元で光が小さく笑うから、空気が震えてこそばゆい。
その感覚すらも愛しくて俺も光をぎゅっと抱き返した。
「俺ん中、謙也さんの精液でいっぱいやで?」
「おん、ぎょうさんだしてもた」
「嬉しい……俺の身体でも謙也さんの事気持ちよおさせられるん、ほんま嬉しい」
またや。光の言葉がちくりと俺の胸を刺す。
今この瞬間も抱き締めた身体は熱を伝えてくれとるのに、光の心だけがずっと遠くにあるような気がする。
ずっと気になっとった。なんで光はいつもこんな風に言うんやろ。
そう思ったとき、そんな気持ちがポロっと口から零れてもうた。
「あんな、光……あんまそないなこと言わんで……俺そんなつもりで光とセックスしとらんで……」
思わずそう呟いた言葉に、光は弾かれたように俺に抱きついとった身体を離して俺を見つめた。
あかん、言葉が足りなすぎたか。
酷くショックを受けたような、今にも泣きそうな顔をさせてまった。
「え……謙也、さん……よおなかったん……?俺んこと、もう要らん?」
「ちゃう。そういうんとちゃう。自分の身体、道具みたいに言わんといて」
「え……」
「気付いとらん?光いつも、自分の身体使うてって言い方すんねん……俺、光の身体を使うて気持ちよおなりたいんとちゃう。
ただ気持ちよおなるために光とセックスしとるんとちゃう。光が好きで好きでしゃあなくて、光と繋がるんが幸せで、光と一緒に気持ちよおなりたいからするんやで」
「謙也さん……」
「もちろん光とするんは好きや。けどそれは光が好きやからで、光がしたない言うなら嫌がることはせんし、光のこと好きなんに変わりは」
「でも……っ!」
ない、と最後まで言い切る前に光がそれを遮るように言った。
「……謙也さんはもうすぐ卒業してもうて、この先知らん女と出会う機会はいくらでもあって、
もしもそんとき、男の俺よりやっぱり女がええって謙也さんが思ったら俺…
やから、どんな女とするより、俺とするんが気持ちええって思ってもらいたいんです。
もし他の女と付き合うて…セックスしたとしても、やっぱ俺のが気持ちええって思ってもらいたくて…っ、
身体だけでもええから、繋がってたくて…」
ああ、やっぱり、気持ちが通じあってないと感じたんは勘違いやなかったんやな。
「光」
光の肩がびくりと、怯えたように跳ねる。
自分でもその声に少し怒気が含まれとったことには気付いとった。
光は叱られた子供のように縮こまって俺を見上げる。
「そうやって、この先ずっと自分の身体道具みたいに使われて生きてくつもりなん?」
「やって俺……謙也さん以外考えられへん……やから身体だけでも」
「なあ、俺が光の事好きな気持ちが光の俺への気持ちより弱いと思っとる?」
「え……」
「お前が俺以外考えられへん言うように、俺も光以外考えられへんねん」
「でも……でも……っ」
「むしろ俺の方がお前に愛想つかされるんちゃうか思って心配やねんで…」
「そんなんっ、ありえへん……っ!」
「そっか、おおきにな、光。あんな、俺まだこんなガキやけど、光のことほんまにほんまに大好きで大事やねん。
やから、身体で繋ぎ止めるなんて寂しいこと考えんといてや……?」
「……ん」
目を伏せて、小さく頷く光はきっとまだ俺の気持ちを信じられてはいないんや。
それはめっちゃ寂しい事やけど、仕方のないこと。
俺かて、いつか光が俺より可愛い女の子と付き合う方がええって思う日がくるかもしれへんって不安になることがある。
未来なんて、今の俺には全然わからんけど。今ここにある俺の気持ちは嘘偽りないほんまの気持ちやから。
「光、もっかいしよか」
「あ、はい……口でします?」
「あのな、今度は俺が光んこと気持ちよぉさせたいんや」
「え……?でも、さっきのかて」
「さっきんとは比べもんにならんくらい気持ちよおしたる」
そっと光を押し倒して額にキスを落とす。
不思議そうに見上げる光に微笑み返して、額、頬、首筋や胸元に何度もキスをする。
「んっ」
「光、好きやで」
「っ!あ……っ、謙也さ」
「ゆっくりでええから、ちょっとずつでええから、俺を信じて」
光の耳元に唇を寄せて、吹き込むように囁く。
「謙也さん……」
「光が好きや。その気持ちは光が男やからとかそんな理由で薄れたりはせん。
今すぐ全部信じてなんて言わんから。
いつか、10年後、20年後、俺の気持ちを信じてもらえるまで、ずっと待っとるから」
「……謙也さんがずっと待っとるなん、ほんまに出来るんすか……?」
「ほな確かめてや」
額に唇を落とす。
「ん……っ、謙也さん……」
くすぐったそうに目を細めて笑う光の頬にもまた啄むようにキスをする。
一つ口付ける度に、俺の中の溢れんばかりのこの気持ちが光に伝わったらいい。
一つ口付ける度に光の中の不安を溶かして、その分少しの幸せを与えられたらいい。
そして長い長い時間を掛けて、いつか幸せだけが残るように。
両手で頬を包むと蕩けた表情で俺を見つめる光の額にもうひとつキスを落として言った。
「大好きやで、光」
fin
2016/08/10