下心半分、好奇心半分。
きっと謙也さんもそうやったと思う。
雰囲気に呑まれてちょっとだけいつもとちゃうセックスがしたかった、とかそんなところや。
部活の後、前々からの約束で俺は謙也さんの家に泊まり掛けで遊びに行くことになっとった。
「あっ、せや謙也、財前ちょおええか?」
部室から連れたって出ようとした俺らを部長が呼び止めた。
部長に声をかけられるのはさして珍しいことでもないのでなんの疑問も持たずに立ち止まり振り返る。
「なんや?白石」
「これ作りすぎてんけど良かったら財前と二人で使うて」
まるで作りすぎたおかずをお裾分けするかのように、部長は謙也さんの手をとって、何かをそっと掌に乗せる。
覗き込んでみると、その手のひらには小さな瓶が乗っとった。
中には謎のピンクの液体。
なんやこれ。
俺の思考と全く同じ5文字を謙也さんが部長に投げ掛けると、背後にドヤァとつけたなるようなムカつく笑顔で言い放った。
「俺が作った媚薬やで」
「…………」
「…………はあああああああああ!?」
謙也さんの絶叫が部室に響き渡ったんは、その五秒後のことやった。
* * *
「で、結局貰ってきてもうたんすか……」
「やって、返しても受け取らんから……」
今、俺らの前には部長からもらった怪しい小瓶が置いてある。
部長曰く媚薬、らしいけど、正直眉唾物やと思う。
「どうします?これ。捨てます?」
「す、捨て……っ、うっ、おん、せ、せやな……」
「謙也さん動揺し過ぎ。興味あるんや?」
分りやすすぎる反応に思わず笑うと、謙也さんは顔を真っ赤にして口ごもる。
この感じは興味はあるけど率先して使おうとは言い出せへん、そんなとこやろ。
それなら謙也さんが答えやすい状況を作ったればええ。
「使ってみます?」
「え!?あ……その……っ」
「俺は興味ありますけど」
「ほ、ほんまに……?」
「謙也さんが嫌ならええです」
「俺はっ、興味、あります……っ」
思った通り、興味はあったらしい謙也さんは恥ずかしそうに俯いて蚊の鳴くような声でそう呟いた。
互いの合意がとれたところで謙也さんは早速小瓶に手を伸ばすと指の先ほどの小さなキャップを開けた。
「……なんや、甘い匂いする。蜂蜜みたいな……」
「へぇ……味も甘いんすかね?」
「ちょっと舐めてみるわ」
と、警戒心の欠片も感じられない台詞と共に指先にちょっとだけ中身の液体を乗せて舐めた。
まあそんなちょっとなら影響ないやろ。
「甘っ!これ直飲み無理や喉焼けるほど甘っ!」
「マジっすか」
ちょっと舐めただけでそう言うんやから相当甘いんやな。
何かに溶かすのを前提としとるんやろか。
謙也さんもそう思ったらしく、閃いたとばかりに表情を輝かせた。
「せや、コーヒーに入れたらちょうどええかも。ちょお待っとって」
そう言い残して、謙也さんは下の階に降りていった。
それから直ぐに下の階からバタバタと足音がしてくる。
大方火にかけたやかんを前に待ち時間にじっとしてられず、かといって火から目も離せずコンロの前でうろうろしとるんやろ。
見なくてもその様は容易に想像ができて一人で笑った。
それにしても謙也さんが部屋を出てもうたから一人残る俺は手持ち無沙汰や。
つか一応これからエロいことしようとしてるはずやんな?もうちょいムードとかあらへんのか…しかも遅い。
いい加減下に様子見に行こうかと思ったらドアの外から「ひーかーるー?あーけーてー」と間の抜けた声が聞こえた。
ドアを開けると謙也さんはトレーに2つコーヒーを注いだマグカップを乗せて立っとった。
「おおきに、お待たせー」
謙也さんが通り過ぎた時、上品なコーヒーの香りが鼻を擽る。
これそこらの安売りのインスタントちゃう、絶対どこぞの名の知れたブランドのええ豆やわ。
こういうところで生活水準の違いを思い知る。
「砂糖とミルクもあるから使ってな。けど砂糖入れすぎたらあかんでー」
そう言うて謙也さんは笑った。
「別にそこまで多ないっすわ」
「よお言うわ、自分普段から砂糖入れすぎやで気いつけや」
「はいはい」
軽口を叩き合いながらテーブルに置かれたマグカップを前に向かい合わせに座る。
目の前には淹れたてのコーヒーにシュガーポットにミルクピッチャー、そして……。
「あっ……」
すっかり忘れとったピンク色の液体が入った小瓶。
珈琲を淹れてきた目的を思い出したらしく、謙也さんがさっと顔を赤らめる。
「せやった……媚薬」
「あー……入れてみます?」
「ん、せやな……」
本来の目的を思い出して、俺らは小瓶に視線を向ける。
「とりあえず、どんくらい入れたらええんやろ……?」
「え……部長に聞いたらええんちゃいます?」
「それこれから使う言うようなもんやん……聞くん……?」
「聞きたないっすね……」
「せやろ?」
どんな顔されるか容易に想像できるわ。
聞きさえしなければ使ってへんて誤魔化せるけど、聞いたら確実にあの人はその意味を悟るやろ。
「ちっちゃいからそんな量入ってへんし……半分ずつくらいやろか?」
「っすかね」
弁当に付く醤油さしくらいの瓶やしそんなもんやろ、なんて適当な考えで2つのマグカップに薬を入れてかき混ぜる。
コーヒーの色で薬のピンク色はちっとも見えんけど、確かにそれはコーヒーに溶け込んどる。
カップを一個受け取って香りを嗅ぐけど匂いも淹れた時のままのコーヒーの香りだけ。
謙也さんはそのまま一口啜る。
この人に警戒心っちゅうもんはないんやろか。
「あ、大丈夫やで。普通にコーヒーの味や」
「そうっすか。ほな俺ミルクと砂糖貰います」
「んー」
部長は遅効性や言うてたな。
確か一時間かそこらやったはず。
まあゲームでもして時間を潰せばええわ。
正直俺はその効力を甘く見とった。
ぶっちゃけ部長の冗談やないかとも。
ただ媚薬の効力を謙也さんがちょっと過信して、いつもより乱れてくれたら儲けもんやなくらいの気持ちやった。
そんな幻想は部長の手作り媚薬の前で儚く……いや、盛大に爆散してもた。
それは俺らがコーヒーを飲んでから三十分後くらいの出来事。
謙也さんがしきりに手を団扇代わりに首筋を扇ぎ出した。
見ればじわりと汗が滲んどる。
俺はあまりそうは感じてへんけど、謙也さんはだいぶ暑そうやった。
「なんや……部屋暑いな…ちょおエアコン下げよ」
そう言って立ち上がったはずの謙也さんは足元がおぼつかずすぐへたり込んでもた。
「謙也さん?」
驚いて顔をのぞいたらなんやめっちゃ顔赤くて息が荒くて身体震えとる。
これただ事やない。
「あ……れ……っ?なん、これ……っ、あっ」
「け、謙也さん?大丈夫っすか……?」
「な、んか……身体……熱……っ、はぁ……っ、う……っ」
苦しそうに浅く短い呼吸を繰り返す謙也さんは座っとることもままならんで床に倒れかけた。
慌てて身体を支えると、くたりと俺にしなだれかかる。
まさか部長、なんか間違ってヤバいもんでも混ぜたんやないか。
「ちょっ、救急車とか呼んだほうが……待っててください」
慌てて立ち上がろうとすると、謙也さんが俺の服を掴んで引き止めた。
「や……いか、んで……っ」
「け、けど……っ」
「ここ、居って……っ」
あんまり必死に止めるから俺も振り払えんくて、とりあえず謙也さんに向き直る。
「ほな、ちょっと横になりましょ?」
そう言って、謙也さんをベッドに連れてこう思って腰に触れた瞬間、謙也さんの身体がびくんて跳ねた。
「ひゃうっ!あっ、あぁっ!」
いきなりのことで何が起こったのかわからんけど、その身体は小さく痙攣するみたいにびくびくしとって、その様子はまるで。
「嘘……イッて、もた……」
「はっ?えっ!?」
謙也さんの足の間で、まだズボンに収まったままのそれは押し上げた布にシミを広げ始めとる。
ほんまにイッてもうたんや。
「ひかるぅ……っ」
混乱しとる俺の耳元で謙也さんは熱い吐息と一緒に甘ったるい声で呟いた。
「あかん……身体、まだ熱うて俺……っ」
「謙也さ」
「んっ……ちゅっ、ふっ、んんっ」
「んぅっ、んっ、ちゅっ」
言葉の途中で唇を塞がれて無遠慮に口内を舐め回される。
つか熱っ!謙也さん口ん中熱っ!くちゅくちゅと卑猥な音を響かせながら蠢く舌の感触が気持ちよくて堪らない。
やっと離れた謙也さんの唇は唾液で濡れとって、血色が良くなったせいかやたら赤い唇がめちゃくちゃエロい。
瞳も涙で潤んでとろんと蕩けたみたいな目で俺を見つめる。
「ひかるぅ……っ、苦しい……っ」
「……っ」
謙也さんの顔がエロすぎて吹っ飛んでたけど謙也さんの股間は張り詰めたままでしんどそうや。
とりあえず楽にしたろうと思ってそっとそこに触れる。
「ひっ、あ……っ」
「とりあえず、苦しいやろ……?脱ぎましょ?」
「ん……っ」
目尻に涙を溜めて必死に頷く。
ほんまに苦しいんや。
勃ったままの敏感な状態やし、慎重にズボンを下ろすとしっかり勃ち上がって薄い布の中でそのカタチを浮き上がらせとる謙也さんのものが目に入った。
パンツも下ろしたったら一回イッとるから中はぐちゃぐちゃで蛍光灯の明かりが反射してぬるぬるなんが触らんでもわかる。
「ひんっ!あっ、あ……っ」
パンツ下ろした拍子に揺れたんすらも感じてもうたんか、謙也さんは甲高い声を上げて背を反らした。
先端からまた少し精液を溢して、身体もびくびくさせとる。
十中八九媚薬のせいやろけど、なんで謙也さんだけ?同じタイミングで俺も飲んだはずやのに。
と、そこで一個思い当たった。
謙也さんは俺より先にちょっとだけ舐めてたんやった。
そのあとコーヒー淹れに行きはったから時間的にはあれが原因で間違いないと思う。
けど、あれはほんまにちょっとだけやったはずや。
指先にほんのちょっと、まさか、あれでこんななってまうん?
想像以上の効果を見て、さっと血の気が引く。
俺らあの媚薬、飲み過ぎたんやないやろか?内心焦りまくっとる俺に、謙也さんが抱き付いて腕を首に回して見詰めてくる。
目ぇうるうるしとるし顔赤いし息荒いしこれ完全に薬回っとる。
「ひかるぅ……もぉ、はよ抱いてぇ……っ」
「ま、待って謙也さん……っ、落ちついっ!?」
またしても俺の台詞は言い切られる前に、謙也さんの唇に飲み込まれた。
「んんっ、ちゅっ、はぁっ、ん……っ」
「んうっ、んっ、ちゅっ」
あかん、くらくらする。
なんやねんこの人、いつも俺のキスでいっぱいいっぱいになってされるがままの癖にいつの間にどこでこんなキス覚えて……って俺や。
逃げようとする舌を絡めて引き出して舐め回して、俺が教え込んだキスを真似しとるらしい。
俺が教えたもんが謙也さんの中にしっかり刻まれとる事実は素直に嬉しいけど、謙也さんの癖にこんな風に俺を翻弄するなんてムカつくから俺からもがっつり舌を絡めて応えたる。
俺を圧倒するくらいの勢いやった謙也さんは徐々にいつものようにされるがままになって簡単に押し倒された。
唇を離すと、トロトロに蕩けた瞳が俺を見つめる。
「光ぅ……はよ、抱いて……」
その言葉と表情に、股間が一気に熱くなったんはたぶん媚薬のせいやない。
謙也さんは自分の秘部を見せ付けるように足を開く。
「俺ん中に、光の精液、いっぱいちょおだい…?」
「っ……」
理性を保っていられたんはそこまで。
そのあとはもう欲に身を任せて謙也さんを抱いた。
「ひかるっ、ひか、やぁんっ、また、イっちゃうぅっ!」
「はっ、俺も、出します」
「あっ、あっ、イくっ、んあぁぁっ!」
ピクピクと揺れる謙也さんの先端から溢れる液体は粘度も量もだいぶなくなり僅かに溢れて竿を伝う。
「あっ、はぁ……、ひか……ひかる……」
両腕を伸ばしてうわ言のように繰り返しながら腕をさ迷わせる謙也さんは焦点の危うい瞳で俺を見つめる。
謙也さんの望む事を悟って、俺は謙也さんの腕に自ら身体を近づけて応える。
謙也さんは俺の背中に腕を回して安心したように頬を擦り寄せた。
「ひかる……すき……」
ふわふわと舌っ足らずな声でそう囁く謙也さんが可愛くて愛しくて堪らない。
夢中で謙也さんの唇を貪るようにキスをした。
舌を絡めて立てる水音が脳を甘く痺れさせる。
「んんっ、ふ……んぅ……っ」
もうあかん……俺も今までにないくらい身体熱なって、頭もぼーっとしてきた。
いつの間にか俺がコーヒー飲んでから一時間くらい経っとる。
でも、これは媚薬の効果なんか、謙也さんのエロさにあてられたんか正直もう良くわからん。
「んあっ!」
無意識に激しく腰を打ち付けると、謙也さんが背中を反らしてきゅうっと俺のを締め付けてくる。
「はぁっ、あ、謙也、さん……っ」
腰が止まらんくて、加減もわからんくなって欲望のままに謙也さんの奥を突き上げる。
「あんっ!あっ!あうぅっ、はっ、アァっ!凄い、なか、光の精液いっぱいっ、はぁっ、気持ちええっ!」
「はっ、謙也さん、俺の精液そんな好きなん?」
「好きっ!好きぃっ、光の熱いの、気持ちええっ!あぁんっ!奥までっ、熱いの奥まできとるぅっ!」
普段のセックスでは謙也さんの負担を考えて加減したり気遣ったりしとったつもりやけど、今日はそんな気遣いには全く頭が回らない。
ただただ謙也さんを抱きたい。
謙也さんの中に俺の熱を注ぎ込んで俺で満たしたい。
「謙也さんっ、んっ、はぁっ、好き、や」
「俺、もっ、んあぁぁっ!」
何度目かの射精で謙也さんのちんこからはもう透明な液体がぴゅっと僅かに飛び散るだけやった。
そして搾り取るように内壁が収縮して、俺のを締め付ける。
「あっ、あぅ……っ、光の精子、また、奥にきとる……」
射精が収まるのを待って謙也さんの中からちんこを引き抜く。
「あ…はぁ……っ、あ、あぅ……っ」
抜けた瞬間から覗く赤い肉壁はひくひくと収縮し水音を鳴らしながら内部から溢れ出る白濁した液体と、小さく痙攣する謙也さんの口から漏れる甘ったるい声。
「あ……ん……光のせぇし、中から……はぁ……中から出とる……」
うっとりとした顔でそう呟く謙也さんは自分の腹に手を当てて愛おしそうに擦りながら笑った。
「……光のせぇし、俺ん中におるんや……」
「謙也さん……っ」
「んぅっ!んっ、ふぅ……っ」
衝動のままに謙也さんの唇に自分のそれを重ねて何度も角度を変えて口内を掻き回す。
互いの口内はどちらのものかわからない唾液で濡れていて舌が動く度にいやらしい水音が響く。
漸く唇を離すと、蕩けた顔の謙也さんが小さく俺の名前を呼んだ。
「ひかる……」
幼い子供のような、甘ったるい、舌ったらずな声で、謙也さんは足を開いて誘う。
「もっと、中にちょおだい……?ひかるの精液で俺ん中、いっぱいにしてや……」
「っ!」
謙也さんの負担とか、普段なら考えてセーブしとる事に頭が回らない。
衝動のままに謙也さんの中に再び自身を突っ込んで突き上げる。
「ああっ!またイっちゃう!イっちゃうぅっ!!」
「はっ、あっ、謙也さんっ」
「あっ、きもちぃっ!きもちっ!あうっ!あんっ!」
「くっ、ぅ……」
「あっ!もぉ、おかひくなうっ!はあっ!あたまおかひくなっひゃうぅっ!」
謙也さんの熱に浮かされたような蕩けた表情と言葉に俺も何も考えられんくらい興奮してまう。
腰を打ち付ける度に、肌がぶつかり合う濡れた音が室内に響く。
「きもひいっ!ちんこ奥まで、奥まできとるぅっ!」
「くっ、また、イクっ」
「あぅっ、なか、あついぃ…っ、あぁ―――っ」
最後の方の記憶は完全にない。
ひたすらお互いを求めて抱き合って身体も頭の中もどろどろに蕩けたような錯覚の中でいつの間にか意識飛ばして二人して泥のように眠っとった。
そして目が覚めたときには薬の効果はすっかり切れとった。
諸々の後始末を何とか済ませた後再び二人してベッドに沈んだ。
「めっちゃ腰いたい……」
「俺も……あとちんこ腫れとるかも……」
「……え、マジか。冷やすの持ってこよか?タオル巻いたの当ててちんこ冷やしたら」
「勘弁してくださいそんなん……羞恥で死ねる」
我ながらムードもへったくれもない会話やったと思う、一応ピロートークのはずやで。
けど心底そう思ったんやからしゃあない。
擦りすぎてちんこ痛いてどんだけやねん。
もう暫くカウパーの一滴もでぇへんのやないかっちゅうくらいはヤりっぱなしやった。
「正直俺2回目イった辺りから記憶ないねん……」
「あー……謙也さんぐずぐずやったもん。俺も途中から記憶ないすわ……」
とんでもない威力やったな。
あん人なんて恐ろしいもん作るんや。
まあ、セックス自体はめっちゃ気持ちよかったし、あんな積極的な謙也さん見られたんは悪くなかった。
「でも、こんなんもったいないな……」
なんて俺の感想に思いがけない謙也さんの一言が投じられる。
「もったいないって……?」
「やって、せっかくの光とのセックス覚えてへんなんて、もったいないなって……光に言われたこととか光の表情とか、ちゃんと覚えとらんなんもったいないやん」
言いながら照れ臭そうに笑う謙也さんが堪らなく愛おしい。
「そうっすね……俺も謙也さんのとろとろのエロい顔も甘えた台詞も全部覚えとらんの、もったいないと思いますわ……」
「えっ!な、何か言うとった……?」
「精子ちょうだいとかちんこ欲しいとか」
「そこは忘れとってや!」
と、突然小さなバイブ音が響いた。
見れば机に放置したままの謙也さんの携帯がチカチカと新着通知のランプを点滅させとる。
でも起き上がろうとする謙也さんの動きは鈍い。
あんだけガンガン突き上げて揺さぶったらそら腰にくるわな。
身体を動かせない謙也さんの代わりにそれを取って渡すと、謙也さんはおおきにと返しながらアプリを開く。
一瞬驚愕したような表情を浮かべてから顔を真っ赤にしてバスンと布団に携帯を叩き付ける。
何事かと思い手に取って見てみれば、画面に表示された名前は部長やった。
そしてその内容に俺も多分謙也さんと同じ心境に陥る。
画面には『言い忘れたけどあれ1滴で効果抜群やから、それ以上飲んだら意識飛ぶまでイきっぱなしになるから気いつけや(^∇^)』などとムカつく顔文字と共にとんでもない事実が綴られていた。
「遅いわアホっ!」
翌日、部長は謙也さんにおかしな薬作りを禁止されたんは言うまでもない。
〜終〜
2016/10/08